理事長所信

第69 代理事長

兼元 博康

2024年度スローガン

精神一到
~ 変化を恐れず、挑み続けよ ~

基本方針

1.時代や地域に必要とされ、憧憬されるリーダーを目指して
2.城下町ならではの魅力を感じ、発見できるまちづくりを
3.なすべきこと・あるべき姿を理解し、共感する仲間を求めて
4.相互に支えあい、連帯を経験できる組織運営
5.すべてのメンバーに学びと誇りを、魅力あふれる団体の発信

はじめに

「私はなぜ青年会議所に入ったのか」入会して間もないころ、繰り返し考えていた時期がありました。島原青年会議所が発足し69年の月日が経ちますが、これまでJCの活動と運動に携わられた皆様も一度は考えられたことがあるのではないでしょうか。

長きに渡り先輩方が紡いでこられた様々な運動は今日のJCを形作り、まちの礎となり、島原半島の活性化と発展に大きく寄与しておられます。私たちが先輩方からお話を伺う際は、それぞれの歴史をとても楽しそうに、そして懐かしそうに振り返られます。明るく、真摯に、そして時には厳しく、闊達な議論を交わしながら作り上げられた多くの事業は、活力に溢れた地域の創造につながりました。

昨今の感染症に対する考え方も変容し、時代は新しい価値観のもとに動き出しました。大きな変化を迎えたこの時代、このタイミングだからこそ我々は今の時代に必要とされるような青年らしい夢を描き、意思をもって更に歩みを進めることが必要ではないでしょうか。 

これからも島原半島を明るく照らし、まちのために、ひととともに、多くの共感を得ながら挑み続ける青年でありたいと思います。

1.時代や地域に必要とされ、憧憬されるリーダーを目指して

「時代が必要とする、地域から必要とされる」とはどの様な状態でしょうか。青年会議所の大きな役割の一つに、地域の若きリーダーを育成するという担いがあります。これまでも島原青年会議所で研鑽を重ねられた多くの先輩方が、今もこのまちに必要とされる、そしてこの地域で活躍される憧れの存在です。長きに渡りその存在であり続けている理由は何故かということを私なりに考えてみると、それは確固たる信念や信条を持ちつつも、既成の価値観に囚われ過ぎず、時代に合わせて「変化」し続けているからであると考えます。

青年会議所はその時々の社会課題の解決に対して感度高く対応してきました。近年で挙げれば、SDGsは産業のトレンドになる前から推奨してきましたし、コロナ禍でのリモート会議についても、いち早く導入し活動と運動を不断のものとしました。できない理由を並べるのではなく、どうすれば解決できるかを常に考え実行するということを体現してきた青年会議所を私は尊敬しています。

「最後に生き残るのは強い者でも賢い者でもない、変化できる者である」という進化の過程を唱えた有名な言葉がありますが、状況に応じて柔軟に対応するということは頭で理解できていても行動に移すというのは難しいことです。当然皆の信じる道や考えが異なる訳ですので、自身が信じる道と異なる考えを許容するには多くの労力が必要です。そしてこれは誰しもが容易に受け入れることは困難で、人はこれまで信じてやまなかったことをいとも簡単に覆され自身の安全性が脅かされると、抑圧したり、感情を露わにしたりと、防衛的な反応をとってしまいがちです。

しかし、私はそこにこそ発展と成長の機会が隠れていると信じています。「時代や地域に必要とされ、憧憬される」ということは、自分や団体の信念を押し付けるのではなく「共感」し「尊敬」されることが重要です。そのためには相手の意見を聞き、受け入れるだけの余裕や、自身の価値観の変化に向けた準備も必要になります。これには、まずは自分から進んで変化しようと試み、多様な価値観や考え方を受け入れるだけの精神性を養うことが重要であると考えています。そしてこれは、青年経済人でもある我々にとって最も重要な能力の一つでもあり、自社の人財育成にも同じことがいえると考えます。自身のコントロールができないのに、他者のマネジメントを行えるはずがありません。我々も変化という進化に向けて、共に修練を重ねましょう。

また、このスキルはこれからを担う地域のこども達にとっても大変重要なことであると感じています。なぜなら進化論にもあるように「変化する力」というのは「生き抜く力」や「やり抜く力」に等しいと考えるからです。コロナ禍で重宝されたICT技術の進化と加速は、スマートフォン一つあれば、いつでもどこでもつながることができるという多種多様なソーシャルネットワークを生み出しました。しかし非対面や疑似体験の恩恵を受ける一方で、その時期に必要とされる体験や経験の不足を引き起こしてしまっているように感じています。こども達の五感を総動員して挑む、たくさんの「まなび」や「あそび」を経験することは、感性や情操を多様に変化させ、より力強く生き抜くことを可能にすると信じています。

2.城下町ならではの魅力を感じ、発見できるまちづくりを

皆さんが考える「このまちならでは」とは何でしょうか。雄大な自然が育む様々な食財や大地の息吹を感じる火山や温泉も、島原半島ならではの魅力です。そしてまたそれと同じくし、このまちのランドマークである島原城も皆に愛され続けています。

島原半島には自然・科学・史跡・文化・産業・交通・人財など、数多くの分野において、地域のみならず全国に、そして世界に誇るべき魅力を有します。しかしこれらの魅力と日常的に接していると、この素晴らしさはいつの間にか当たり前のこととなってしまいがちです。

しかしながら我々は、くしくも日々の当たり前が、当たり前でなくなる時代を経験しました。ほんの数年前までは、まだ誰もそのような価値観に遭遇するなどと考えたこともなく、私自身も日々の当たり前の尊さに気付かずに過ごしていました。

私達の運動は、まちがあるからこそ存在し、地域を巻き込み率先して行動することで共感を得続けます。しかし、先般の大きな価値観の変化の中においては、その在り方に多くの試練と選択を迫られました。それは、これまで当たり前であった相集い力を合わせるということを困難にし、地域社会に対する課題解決の手法の変更をも余儀なくさせるものでした。不確かな情報や憶測、考え方に翻弄され、是か非かも分からない状況が続く中で、まちづくりの意義を問うたメンバーも多いかもしれません。

しかし、そのような中であっても私が目の当たりにしたのは、強い使命感のもと新たなまちづくりの形を模索するメンバーの姿でした。それはこのまちの、愛するふるさとの可能性を強く信じる機会にもなりました。

時代は再び当たり前の日常を取り戻しつつありますが、城下町やお城がある風景というのは決して当たり前でなく、特別なことなのかもしれません。

昨年、地域の皆様をはじめ、県内外の多くの青年会議所メンバーのご支援とご協力により、「第42回全国城下町シンポジウム島原大会」が無事に開催されました。そして本大会を皮切りに、今年度は島原城築城400周年の節目の年を迎えます。昨年、各地の青年会議所にPRキャラバンへ出向かせていただいた際には、その地域を愛してやまず圧倒的な熱量をもって、まちづくりに挑む全国のメンバーの姿を目にしました。そして、住み暮らす場所は違えども、自分たちのまちに誇りを持ち地域の為を想いひたむきに努力する姿に羨ましささえ覚えました。今年も昨年に引き続き「城下町」というこのまちならではの特徴を生かし、更なる魅力と新たな発見にあふれたまちづくりを行って参ります。

3.なすべきこと・あるべき姿を理解し、共感する仲間を求めて

 青年会議所は人種、国籍、性別、職業、宗教を問わず、地域に住み暮らす20歳から40歳までの「品格ある青年」によって構成されます。運動に対して高い志を持ち、自ら仲間入りするメンバーもいれば、これまで興味は無かったが勧誘をきっかけに加入するメンバーなど、入会の動機は人それぞれです。そのような多種多様な価値観が集まる団体において「なすべきこと・あるべき姿」とはどの様な姿でしょうか。

私達は会議の導入部分でセレモニーを行いますが、青年会議所という組織において我々がどうあるべきなのかは明確にMission、Visionとして記されています。そして日本の青年会議所においてはJC宣言文と綱領において示されており、おそらくこれはそれ以上でもそれ以下でもあってはならないと考えています。

各地の青年会議所でも会員数減少に対する危機感と積極的な会員拡大の必要性が叫ばれるなか、当会議所も会員数の拡大は例年の急務ではあります。しかし、ただ数が増えれば良いかというと決してそうではないと考えています。もちろん、私のように入会後にJCの真価に気づき、知らしめられ、その使命や目的に共感する場合もあるかと思います。自己成長や育成という面においてはそのような価値観の変化を起こすことも重要であると考えますが、本来であればMissionやVisionに共感したからこそ仲間になるのではないでしょうか。

行動学研究のなかに「内的な動機にて動き出すことができる一人の行動力は、外的動機で動かされた7人にも勝る」というレポートがあります。極めて理想的かもしれませんが、我々はまずそのような会員拡大を目指さなければなりません。

理想的な会員拡大を目指す一方で、現実として青年会議所へ入会動機が「付き合いだから」「商売につながるから」というメンバーにもしばしば遭遇します。かくいう私も、しばらくは場当たり的に活動に参加するJCを誤認したメンバーの一人でした。結果的に交友関係が広まり自身の仕事につながりを生むことはあるかもしれませんが、初めからそのような動機で入会してしまうと、私のように本当の目的や使命に気付くまでに多くの時間を要します。

しかしながら、入会する前にJCの理念や信条を理解してもらうことは簡単なことではありません。また、本当の価値は自身が体験してみないと見出せないものです。すなわち、私たちは前者の会員拡大を目標としつつも、後者の会員拡大も否定せず柔軟に組み合わせて対応していく必要があると考えます。そして、入会の動機が人それぞれであったとしても、入会後に意義を実感でき目的に変化を起こすようなアプローチを継続しなければいけません。

これからも私たちは「地域の為に、仲間と一緒に挑戦してみたい」という部分に共感し自ら行動を起こすことができるような仲間を追い求めつつ、入会後もより良く変化できるような会員拡大を目指していきます。

4.相互に支えあい、連帯を経験できる組織運営

私たちが青年会議所という団体に所属する以上、ルールや規律を重んじなければいけません。青年会議所には定款や運営規程が存在し、組織の一員になるということはこれらのコンプライアンスを約束することであると解釈しています。また組織の運営においてはこの部分を意識した体制づくりも必要不可欠で、皆がそれを理解し実行していくためのガバナンスも求められます。私はこのような体制づくりにおいて最も重要なことが相互扶助とそれを意識したメンバーの連帯であると考えています。

青年会議所の強みの一つにリーダーが毎年異なるということが挙げられますが、これまでも島原青年会議所は「明るい豊かな社会の実現」を軸に、68通りの方法で運動を行って参りました。本年は私が理事長の職責をお預かりしますので、所信と69通り目の方向性を書かせていただいておりますが、組織図にもあるように本会の意思決定機関は総会や理事会であり、その場において私も含めすべての挙手は等しく1票です。私の考える組織、特に会議体というものはあくまで並列で、とりわけ主従関係のない青年会議所において、この部分は極めて重要であると考えています。つまり、この会をより良くしたいと思えば、委員会や理事会等の会議の場では、役職や在籍年数に関係なく忌憚の無い意見を発し、また出された意見は真摯に受け止めなければなりません。

そして、最も重要なことは、皆で決めたことは最後まで全員でやり抜くということです。相互扶助と連帯を全員で発揮し力強い組織運営を行って参ります。

5.すべてのメンバーに学びと誇りを、魅力あふれる団体の発信

私たちが行う事業の多くは理事会に諮り承認を得ますが、その構築や実施において多くのフォロワーメンバーが参画します。活動や運動を共にして意見を交えるということは、それぞれの立場での考えに触れる貴重な機会でもあり、自身と異なる考えを知ることは自らの成長において必要不可欠であると考えています。そして参画するすべてのメンバーには等しく機会を提供し、メンバーはその機会をものにすることで学びにつなげることが重要です。

青年会議所の運動は同じ志を持つメンバーが多いほど広く波及し、それが多くの人に思いをつなぐ契機となります。自分達が所属する団体に誇りをもち、胸を張って発信できるような運動を実施したいと考えています。

そして、我々の運動を多くの人に伝えるためには、効果的な発信が重要です。現代の広報を考えた際、情報発信を行うための手法は多岐にわたるものとなっていますが、継続して安定的に発信できるような広報の仕組みを構築する必要があると考えています。そして、我々の運動を、住み暮らす地域のみでなく地域は違えども同じ志をもつメンバーと広く共有していく事も大切で、長崎ブロック協議会をはじめとし県内外の青年会議所、そして様々な関係を構築してきた多くのJAYCEEへと情報を発信し共感しあうことで、さらなる協力体制を築きあげる事が必要であると考えています。これまでの関係性をより一層強固なものとするために、新たな仕組み作りにもチャレンジして参ります。

結びに

青年会議所は多くの魅力的な運動を実施し発信し続けますが、それぞれの家庭や仕事に勝る立場のものではありません。

しかし、もし挑戦することが許され、その志があるのであれば、青年会議所での様々な活動や運動を通して得られる経験には、人生をより豊かにするための学びがあると私は確信しています。

「無難に」などと考えてしまうと「それなり」で終わってしまう、非常に克己的な場所ではありますが、精神一到を貫き自分自身が前向きに変化に挑む覚悟があれば、能力を賦活し、進んで逆境を経験することさえできます。

疾風に勁草を知るよう、人は困難に直面した時に初めて本当の強さや弱さが分かります。そして、弱さを知ることができれば、補い成長しようと努力することもできます。

努力をしても実を結ぶかは分かりませんが、物事を成し得た人は必ず努力しています。それゆえに、私たちが疾風にめげず強くしなやかに咲き続けるためには、自らの意思で強く根を張るほか無いのです。

成長や学びを得るための機会は誰にでも訪れるものではありません。しかし、私達は幸運にも青年会議所の門戸を叩いたその瞬間から、数え切れないほどの機会がその挑戦を待っています。

じぶんのため、ひとのため、まちのため、そしてこれからの為に、変化を恐れず共に挑み続けましょう。